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『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』ネタバレ全開レビュー 飛べ、ファルコン! [レビューなど]

 タイトルと矛盾しますが、ウィンター・ソルジャー抜きで所感を述べていきます。
 だって、彼よりファルコンの方が格好いいんだもん!
 ネタバレ全開ですので、続きを読みたい方はそのつもりで是非♪
 まず、ニック・ヒューリーの祖父の話から始めます。
 エレベーターの添乗員だった祖父はチップを弾んでもらうことが多く、その稼ぎを袋に入れて持ち歩いていたそうです。ある日、ガキからカツアゲされそうになりましたが、袋から22口径を取り出して難を逃れたとか。
「祖父は人間が好きだったが、信用していたわけではない。ところで、これは22口径どころではないが…」
と言って、キャプテンにシールドの最新装備を見せます。
 衛星ヘリキャリアを連動させて、いつでもどこからでもテロリストを殺害できるシステムです。
 キャプテンは、まだ犯罪を犯してもいない人をいとも簡単に排除し、また人を敵味方に分けて「テロリスト」というレッテルを貼る考え方に難色を示します。
 ここで示唆されるのは、個人レベルの自警意識をそのまま国家の防衛に当てはめる論法の欺瞞ではないでしょうか。世界の多様性を、コミュニティ内の善悪に還元する、いわば衣を変えた排除の論理です。

 ニックの武器の比喩と同じ役割を果たしているのが、ピアースが2度までも口にする「外交努力など無駄だ」という姿勢。
 彼は彼なりに、大使館人質事件が交渉ではなく武力によって解決した様子を目の当たりにして相互理解の限界を悟ったという経緯があります。
 また彼は「あなたの娘がテロリストに殺されるとわかっていたら?」とも言う。
 ここでも個人的な不安を突き、社会的な脅威と意図的に混同させようとしています。
 ヒドラは個性を排除することで支配を磐石なものとすることを希求しています。これは個人を社会で縛る思想の極北であり、ファシズムの顕現に他なりません。

 ファシストの手口は常に一貫しています。一人一人の不安に働きかけ、不安を恐怖に育て、個人の恐怖を社会的脅威へと育て上げることで、圧政を正当化します。(「そのためには敵がいる」)
 挙げ句に社会的不安に比べれば、個人の悩みや不安や葛藤など取るに足らない、と言い出します。戦中の我が国のように。
 この手法はカルト教団の勧誘と似ていますし、実際両者は相性がいい。(「ヒドラ万歳!」)
 そして、不安に追い詰められて正常な思考と判断力を放棄した人は群れをなし、大きな力に依存することを望みます。まるで家畜のように。
 余談ですが、不安を突いて恐怖を育てて…で止めて金をせびればオレオレ詐欺の完成です。不安とは誰もが必ず持っているものだから、手近なビジネスチャンスでもあります。

 では、そうならないためにはどうすべきか。
 個人の不安の段階でその問題に独力で向き合い、仲間と共に問題の性質を把握し、悪人の甘い誘惑に付け入る隙を与えないことです。
 ここでファルコンのカウンセリングシーンが俄然意味を持ってくるのではないでしょうか。
 かつて優秀な兵士であった彼は国を疑うようになります。彼は自分の中で大きくなっていく不安と向き合いながら自分を鍛え、同じ境遇にある人々の不安に耳を傾け、助言を行います。

 ここ最近のヒーローたちはとにかく悩みがちです。
 自警活動を楽しんでいる自分の大義に悩み、不死の身体の置き所に悩み、銀河の王としての資質と狡猾な弟に悩み、天才的頭脳と不釣り合いな己のナイーブさに悩み、制御不能かつ破壊的な別人格に悩み…。
 彼らは強力な能力者、ヒーローなので必然的に独力で不安に対峙せねばなりません。彼らにはその強さがあるし、葛藤を力に変えて状況を打破する様がドラマになる。
 しかし、名も無き市民の不安や悩みはどこに向かうのでしょうか?まあ、大抵は大きめの組織が美味しくいただくことになっています。一例を挙げるならば「ショック・ドクトリン」とかがそれにあたるでしょうか。http://democracynow.jp/video/20070917-1/
 上記のように、人の不安とはいい金蔓なのですね。災害復興費の名目でまきあげた税金を無関係な事業に浪費するように。

 我らがキャップ、キャプテン・アメリカもまた国是の「自由」の周りを逍遙する戦後アメリカとともに悩み続けてきたヒーローなのですが、この映画シリーズで一貫しているのは、彼の立ち位置がアメリカの守護者ではなく、自由の求道者であること。
 求道者は常に戸惑い、振り返り、困難な道を恐れずに進みます。なりふり構わず、我が身を省みず。
 ファルコンは前者を見てとったからこそキャプテンを信頼し、国家の意思に翻弄されてきたブラックウィドウは後者を見てきたからこそ彼を疑わない。(「あなた、恋人はいないの?お隣さんはどう?」)
 彼らが黒人、元敵国のスパイ、というのも従来の人種内コミュニティーやイデオロギーに縛られない個人の見識に基づく絆を象徴しているように思えます。
 巨悪に立ち向かう為には、たった一人から始めなければいけない。意味がないのです。
 そして自分の不安を認識しながら他者の不安に寄り添い、勇気づけること。あなたも自分も、弱くも孤独でもないことを伝えられた時、きっと誰もがヒーローになるのではないでしょうか。

 戦闘力はいまいちのカウンセラー。手作りの翼で悩める求道者を空の高みへ導くファルコンこそは、能力者ならぬ我々に最も身近なヒーローなのです。
 だから飛べ、ファルコン。悩める我らの想いを乗せて。
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つぼっち

観に行こうかどうか迷っていたのですが、
やっぱり観に行きたくなってきました。
by つぼっち (2014-04-27 23:40) 

クロヒコ

つぼっちさん、こんばんわ。

名前といいコスチュームといい、最も滑稽なはずのヒーローの映画が最も硬派、という所に作り手の心意気を感じます。
『アベンジャーズ』をご覧になっていたらより一層楽しめると思います。
アベンジャーズのメンバーそれぞれの関与がちょくちょく出てきて、その芸の細かさにも唸らされました。
by クロヒコ (2014-04-29 02:00) 

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