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『点と線』ここがすごい [読書感想文]

一昨日の産経新聞朝刊のテレビ欄の、松本清張の『点と線』を扱う番組を紹介する中で、
「荒唐無稽なトリックが中心だった従来の探偵小説に対抗し、犯罪に至るまでの心の内面や動機を描いた清張ミステリー
という一文がありました。
一般的な評価でしょう。
しかし、これを『点と線』に当てはめようとすると、ちとツライと言わざるを得ません。
なぜならば、この作品は「バカミス」だからです。
ちなみにバカミスとは、「荒唐無稽すぎてギャグになってしまっているミステリー」を指す近年の造語です。

では、『点と線』のどこかバカなのか?
推理小説の解説をするときはネタバレに留意しなければいけないので、慎重に書きますが、

・園児でも1秒で気付くメイントリック

その他低レベルなトリックにいちいち悩む警察の低能さ

この2点に尽きるでしょう。
従来、トリックとは不可能犯罪を演出するためのものですが、本作品のメイントリックはそもそも謎ですらありません。
警察が右往左往する状況そのものが荒唐無稽です。
また、サブトリックは捜査が進むうちに意外すぎる前提が披露され、読者は「最初に言えよ!」と突っ込むことになります。
そもそも読者が全容を推理できないタイプの作品ですから仕方ないのですが。
主なトリックが「舐めるな!」と「知るかよ!」という脱力すべき代物ですから、火曜サスペンス劇場や土曜ワイド劇場に親しんだ世代から見ると、たいそう食い足りません。
増してや、金田一少年やコナン君に親しんだ世代からは鼻で笑われるでしょう。

というのも、もともと『点と線』は「旅」という旅行雑誌に連載されていたので、主なトリックも交通機関にまつわるもので、謎解きのカタルシスより旅情を優先させたものであります。
すると、少なくとも本作品に限れば「従来の探偵小説」と「新たな社会派推理小説」という対立軸は的外れとなります。
元来「トラベルミステリー」を企図して書かれたのですから。
動機の背後にある社会構造と人間心理に肉薄した犯罪小説であるとともに、お粗末なトリックのインパクトが悪目立ちする推理小説でもある、不思議な作品ですが、「トラベルミステリー」として最も高く評価されるべきでしょう。
それなりの社会性と叙情、肩透かしのカタルシスと絶品の旅情が詰まったお得な作品と言えるかもしれません。

ちなみに、続編にあたる作品に『時間の習俗』がありまして、そちらは推理小説としてもなかなかの名品です。
すごく地味ですが。
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シミルボン・星野


初めまして、書評サイトのシミルボン(https://shimirubon.jp/)と申します。ブログ書評を拝見し、ぜひシミルボンでもお書きいただけないかと思い、ご連絡致しました。ご興味おありでしたら、こちらのメールアドレス(offer★shimirubon.jp ←★を@に変えてご送信ください)までご連絡いただけませんでしょうか。あらためて詳細を送らせていただきたいと思います。ご検討くださいませ。
by シミルボン・星野 (2017-09-08 18:17) 

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