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『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE』を見た [レビューなど]

作業用大型ロボット「レイバー」が実用化された、20世紀末の東京を戦場に見立てたシミュレーション映画。従来の主人公たちがものの見事に脇に追いやられており、アクションシーンなどは付け足しっぽく、地味で動きの乏しい物語だが、繊細な画と巧緻な脚本と声優の演技力でぐいぐいと引っ張っていく。あまりにもスケールがでかくなりすぎてもはや「ロボットもの」でも「警察もの」でもない、「押井もの」になっている。ただし、現在の日本で「戦争」について思いを馳せる貴重な機会を与えてくれる。かも。(☆☆☆☆)



機動警察パトレイバー2 the Movie [DVD]

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  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • メディア: DVD





はい。
一言で言い表すならば押井守作品。
やってること『犬狼伝説』と一緒やんw
あまりにもミリタリー寄りなので、公開当時は一般的なアニメファンは戸惑ったんじゃないでしょうか。
もっとも、いまでは「押井守はそういう人」という共通認識が出来上がっていますが。
当然、ゆうきまさみの色は一切消滅した作品となっています。

東京湾上空を飛行していた一機の戦闘機から発射されたミサイルがベイブリッジを破壊。
誰が?何のために?
だがそれはその後首都を襲う混乱の先駆けに過ぎなかった。
かつて無い脅威から、疑心暗鬼に駆られた警察、自衛隊はそれぞれ自制心を失い、矢継ぎ早に変化していく事態はどんどん危険な方向へ…。
後藤は何を思いどう決断を下すのか?南雲は過去の因縁を断ち切ることができるのか?そして、かつての特車二課の面々は…?

典型的なキャラクターアニメの側面を残しつつエンターテイメント路線を堅持した前作(劇場版)と一転、シリアスの頭に馬鹿が付くぐらいの大人のドンパチシミュレーションです。
本作では特車二課の隊員たちはほぼ別々の部署や企業に散らばっており、時系列ではシリーズの締めくくりと位置づけられています。
したがって今作は第一小隊、第二小隊長の南雲、後藤ら「大人」たちが実質的な主人公です。
大人が主人公だと話が早い。大人の物語だから膨大な情報量もぐいぐい詰め込める。警察の縦割り構成、軍事知識、在日米軍も絡めた日本国上のパワーバランス、国家論、都市論…etc…。
子供はついていけません。並の大人でも背伸びしてやっとの、まさに押井作品。
しかし普段から新聞を海外面まで読んでいる人ならば、いろいろ頷ける部分も多いでしょう。
アニメだからって舐めてかかると痛い目見ますぜ。ぐっへっへ。

作者のメッセージを長ゼリフで語らせるのが押井作品の特徴ですが、本作の長ゼリフ担当で、全体を通しても抜群の存在感を示したのが誰あろう竹中直人。
いやあ、いい声してるんですわぁ。
この人が「戦後日本の平和ボケ」をカッコよく論じれば、理念と意思を持ってとんでもないことをしでかそうとしている犯人の心理に、わけもわからず頷いちゃえます。
ちなみに『イノセンス』でもそれはもう良い仕事をなさってますよ竹中直人。

そもそもこの「機動警察パトレイバー」は隊員たちの成長がメインだったのですが、彼らが巣立って行ったあと、再び集結することでそれぞれが今まで得てきた収穫や、これからに向けた覚悟に光が当たってきます。
やっかいな新米だった彼らは「任務をこなす」レベルを経て次の段階にステップアップしており、自分の人生と照らし合わせて「任務」の意味を考えるようになっています。
もっとも、なーんも変わっていないキャラもいて、それはそれでいいのですがw
制作当時はまだぎりぎり「未来」だった世紀末を現実の時は追い越してしまいましたが、特車二課の最初のメンバーたちはあちらの世界でそれぞれ立派に、元気に過ごしているのだと思えるような仕組みになっています。
そのあたりはちゃんとシリーズとしての落とし前もつけていて、なかなか心憎い。

見終わって思ったのは、こういった「都下の戦時シミュレーションもの」という微妙な内容をここまでクールに実写映像化することは難しいだろうなあ、と。
アニメがまだ「子供向けの未熟なジャンル」であるという認識があったために、クリエイターが自分の意思を反映させることが出来た時代の産物といえるかもしれません。
押井守と伊藤和典(脚本)が自分たちの意思を反映させまくった結果、宣伝する方がどうやっていいか戸惑っているような特報や予告が微笑ましいです。
しかし現在ではこの種の映画で出資者やプロモーターの理解を超えたような作品はまず作れないでしょうし、作ったとしてもせいぜい『亡国のイージス』とかだしなあ。

総括すれば、この「機動警察パトレイバー」。
劇場1作目は「大人が見たほうが楽しめる」作品で、この2作目は「大人じゃないとわからない」作品と言えそうです。

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しのっち

「ロボットもの」でも「警察もの」でもない、「押井もの」。
まさにその通りだと思います(笑)
初めて見た高校の頃以来何十回と見てますが、大人になった今背伸びをしてみてもどこがどうおもしろいのかわかりません(汗)
でも好きです。
個人的には川井憲次の曲も好きで、場面場面を妙に盛り上げてくれます。
その曲を含め、雰囲気というか押井ワールドに飲み込まれるのが快感なのかもしれません。
子供が何度も何度も飽きずにすべり台を滑り降りるようなもんでしょうか(笑)
by しのっち (2009-02-25 00:02) 

クロヒコ

川崎憲次の曲!
いいですよねえ。
1作目ではまだキャラ物としての縛りが感じられましたが、今回はやりたい放題といった感じの渋くて重い、雰囲気のある曲が多かったですね。
押井監督との名コンビです。

この作品の面白さは、後藤たちの状況にわが身を重ねてしまうことで、自分もまた歴史の証人になっているかのような大物感を満喫できることだと、個人的に思っています。
関が原の戦いの戦況を克明に辿っているテレビ番組を見ているときのような高揚感、とでも言いましょうか。
これは生半な知識で構成された脚本で生じる感情ではありません。
上記の国際情勢から国家論から都市論平和論、もろもろの情報をバランスよく組み立てなければ、見ている人に「俺ってすごいかも」とすんなりと思わせることは出来ません。
攻殻機動隊などモロにそうですが、肝心なことは盛り込まれている知識を理解できていることではありません。それらを素直に「すげー」と思える知的好奇心があれば、この種の作品を単純に楽しむことができるのだと思います。
ですから『イノセンス』あたりに対して「何言ってるのかわからなくてムカつく」とかいう意見を聞くと、残念な気持ちになってしまうのです。
いいじゃないか、わからなくても!
その辺の、「雰囲気」を楽しむのも押井作品の醍醐味かと。
by クロヒコ (2009-02-25 01:11) 

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