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『機動警察パトレイバー THE MOVIE』を見た [レビューなど]

巨大ロボット(レイバー)が実用化された近未来の東京に新設された警備部隊、という設定で多方面に展開することになった企画の劇場版。もともと企画先行型の作品であるにも拘らず、奥行きと娯楽性を備えたアニメ映画の傑作となった。魅力的な犯罪者、宗教的見立て、サイバー犯罪などの要素を押さえ、また失われつつある都市居住空間を丹念に描くことによって、人間の内面をも示唆している。散見される古臭さが意外に思えるほど普遍的な完成度が高い。(☆☆☆☆)



実はリアルタイムで漫画は買っていました。
妙に現実的な設定がよかったです。(「南千住副都心計画」とか)
で、アニメの方はほとんど未見だったのですが、サブキャラとメインキャラが変わっていたり、悪役の比重が変わっていたり、その辺を見比べる楽しみもありかと思います。
この劇場版はアニメの延長線上にあるので、当然そちらの設定を踏襲しています。
ただ、脚本が実に要領よくまとめられているので、元の設定を知らない方でもすっと入っていけると思います。

20世紀末、過密化する首都圏の環境と地球温暖化による海面上昇に対処するため、東京湾における大堤防建設と大規模な埋め立てを兼ねた「バビロンプロジェクト」が行われていますが、それを実現したのが「レイバー」と名付けられた大型作業用ロボットの実用化でした。
しかし、それは同時にそれらを用いた「レイバー犯罪」を生む土壌ともなり、警察は新しい犯罪に対処すべく「特車(レイバーを指す)2課」を新設、高性能レイバーを配備することになりました。
このシリーズは、通常の任務からかけ離れた能力が必要とされる特車2課に配置された個性豊かな面々が主人公です。
と、ここまでは基本設定。

もはやレイバーによる作業が日常化した段階で、従来の作業能率を飛躍的に向上させるOS「HOS(ホス)」が開発され、次々にレイバーに装備されていきました。
しかしその「HOS」には開発者がウィルスを仕掛けており、一定の条件が整うと首都圏のレイバーが一斉に暴れだしてしまう…。
と、これが本作のお話。

犯人の天才プログラマーは冒頭でいきなり投身してしまいます。
「警察もの」であるにもかかわらず、のっけから犯人探しや駆け引きの要素は一切なしです。
にもかかわらず、面白いんだなこれが。
結果、特車2課の小隊長の依頼を受けた刑事は彼の足跡を追うしかなくなるのですが、何故か犯人は構造ビルを望む再開発地区のおんぼろアパートを矢継ぎ早に転居していた。
開発や発展から取り残されたような、半ば廃虚やゴミ捨て場と化した街並が丹念に描かれ、それは本作のテーマの基部をぼんやりと照らしています。
人の行い。その目的無き破壊と創造。
無秩序な人為の奔流を俯瞰するように、神の視点から犯人は計画を進行していき、その行く末を確信して自らの命を絶ちます。
…これ、劇場版アニメですよ?
しかも20年前の。

ただ、犯人が「バビロンプロジェクト」に関連付けて残していく、旧約聖書にちなんだキーワードの数々の関連性はけっこう荒っぽく、「なんとなくそれっぽい」レベルです。
そう感じるのも、この作品以降膨大な数のフォロワー作品が生まれ、その中でこのような「キーワード」などの小ネタの扱い方が洗練されていった結果でもあります。
重箱の隅はいくらでもつつけますが、そこしかつつくところが無いとも言えます。
ロボットアニメものであるにもかかわらず、アクションシーンの時間は多くありません。
犯人の真意と仕掛けられた罠が解明されていくスリルや、おそらく都市論を含めた社会性のありかたまで、本作は多層的な奥行きを備えているため、飽きる暇がないのです。
また、それらを繋ぐ編集の巧みさ、切れ味のよさも際立っています。
ようするに、総合的な娯楽作品として成立しているといえましょう。

さて、この「パトレイバー」に影響を受けた作品として最も成功したのが『踊る大捜査線』シリーズです。
特にシリーズのスピンオフ作品『交渉人 真下正義』では、この『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の影響が顕著です。
ただ、また独自のアイディアも盛り込み、本作からもいくつかのアイディアを取り入れたものの『交渉人 真下正義』はネタもとのアニメよりもさらに「キャラ物」としての色合いが濃くなってしまい、見ごたえの散漫な作品となってしまいました。
確かに、「要素」は時代と共に洗練されてきましたが、根本的な「話」としての面白さはどうにもなりません。

さすがに『攻殻機動隊』とくらべちゃうとスケールもクオリティーも落ちちゃいますし、所々、「あの頃のアニメ」的なセリフまわしが目に付きますが、それでもしっかりとした胴回りの太いストーリーにグイグイ引き込まれてしまうこと請け合いです。
また、押井作品の特徴でもある、人間性への深い洞察は本作では控えめ。
面白い映画を作れる、彼の基礎的な実力を素直に楽しめる作品でもあります。
あと、この「機動警察パトレイバー」はWikipediaが大変おもしろいです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E5%8B%95%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC#.E6.88.90.E7.AB.8B.E3.81.AE.E7.B5.8C.E7.B7.AF


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しのっち

クロヒコさんこんばんは。
最近は何に対しても無気力なこと甚だしい生活を送っていたのですが、久々にコメントしてみます。
と言うのも、このパトの劇場版こそが自分がヲタの道を歩むことになったきっかけだったからです(笑)
自分も未だに年に2~3回は見てしまうくらい好きな作品です。
んが、今回クロヒコさんに明確にそのおもしろさを解説してもらって「なるほど」と改めて納得してしまいました(笑)
さすがです!
単純に娯楽作品として優れているんで、原作を知らなくても楽しめるんですよね。
人気があるのもわかります。
全くの一般人だった自分もたまたまこの劇場版を見て、原作・アニメとパトにハマっていき現在に至ります(笑)
ウィキペディアも後で見たいと思います。
楽しみだぁ~。
自分は劇場版の2も好きなので、いつかそのレビューもお願いします(笑)
by しのっち (2009-02-17 23:08) 

クロヒコ

これは「その道」への玄関に成り得るインパクトのある作品ですよね。「アニメでしか出来ないこと」をきっちりやってますもの。
例えば、ジダンの「サッカー選手にしか出来ない技」の美しさが、世界中の少年を魅了したように。
さっき「2」の方を見たのですが、そこんとこをさらに突き詰めててビビりました。
あの内容、実写でやったらいろんなところからクレーム来るでしょうし、第一かかるお金が桁違いになるでしょうね。
いろんな意味で度肝を抜かれた「2」の感想は、もう少しお待ち下さい。

by クロヒコ (2009-02-19 02:39) 

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