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悪魔の手毬歌at浅草名画座 [レビューなど]

自分は横溝正史の金田一シリーズが好きで、映画化された作品は大抵読んでいます。多分。
ですから、「高倉健が金田一を演じている」「スーツを着てオープンカーを飛ばしてる」「美人秘書もいる」などと聞いて気にならないはずありません。映画ファンの彼女は浅草の名画座は気になっていたそうなので、自分は作品、彼女は映画館をメインに旧・浅草六区へ繰り出しました。
ごめんなさい。
最初はただの出来心だったんです…。

場外馬券売り場に程近いビルの地下に浅草名画座はありました。
よく行く早稲田松竹や新文芸座と違い、劇場スペースをとりまくスペースに灰皿が据えつけてあり、「おっさん」(公営賭博を担い続けている頼もしい人々)が吸い放題吸っているので、上映を待つ人は副流煙吸い放題です。
手書きのスケジュール表がありました。

1分単位です。謎だ。
売店を見ると、何故かかっぱえびせんとポテトチップスだけが¥200で、市場価格との大きな隔たりが気になりましたが、これも謎です。
『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』が終わり、出てくる人出てくる人全部「おっさん」です。
劇場内に入るとまず室内に充満する空気にたじろぎました。

むうん。

なんだこの濃密に練りこまれた加齢臭は!
メーデー!メーデー!
あとなんだか、ペットの臭いがする…。
加齢臭の内訳についていま少し言及しますと、座席の半分ほどを占める観客の80%がおっさんで、さらにその半数が当たり前のように飲酒しています。おっさんはほぼ全員が喫煙していると推測されるので、一度体内に取り込まれたヤニとアルコールが一人ひとりの人生の欠片とともに吐き出されて劇場内に充満しているのです。
それでも稀に映画ファンと見られる青年や中年夫婦もいるにはいるんですが、基本的にはおっさんの花園です。そりゃもう花盛り!
その証拠に床はゴミだらけで、空き缶から中身がこぼれて床の傾斜に沿って液体の筋が出来ています。べたべたした床全体が黒ずみ、絨毯であったと思われる箇所はガビガビに毛羽立っています。
シートそのものは一見すると綺麗なのですが、油断がなりません。念のために臭いをかぐのはやめておきました。

不安と好奇心が同時に募り、いわばダウナーとアッパーがちゃんぽんになった酷いトリップ状態のまま上映開始。
ここから映画レビューに突入しますと、一言でいえば「あんまり」でした。
渡辺邦男監督は公開当時(1961)はまだぎりぎり「御大」でしたが、果たして原作を通読して理解していたのか怪しいです。
どっからどう見ても高倉健にしか見えない金田一耕助が気にならないほど、原作から逸脱したストーリーがあれよあれよと言う間に進行し、単なる因果話に落ち着いてしまいました。
設定と小道具を拝借しているものの使い方が頓珍漢で、結果なんのカタルシスもない筋書きになってしまっています。
全編ひっきりなしに何かが起こっているのにテンポは緩慢で、謎に対する興味を持続できません。
これではミステリというジャンルを作り手が理解しているのか疑わざるを得ません。観客を大きく引き離して作品だけがぶっちぎりでゴールテープを切っている印象です。

しかし上手くできているもので、作品への興味を失ってきた頃合にスクリーンの外からそいつはやってきました。
自分は客席を左右に分断する中央の通路沿いの席にいたのですが、最前列になにやら動く影を見つけました。
…ネズミさんでした。
今年の干支ですね。ちゅう。
こいつぁ春から縁起がいいや!

そんなわけあるか!
あと、後ろの座席の酔っ払いがクダまきっぱなしでうるさいんですけど。
よく聞き取れないのですが、日々の不平不満に混じって、画面に警察官が出てくれば、
「正義ってのはな…」
健さんが推理を始めると、
「だから犯人は…」
といった調子。
中途半端に内容に触れないでください。
あと、頼むから前の座席を蹴るな。脚が弱ってるみたいだから大して揺れないのが救いですが。

物語は一応のクライマックスを迎え、全然意外じゃない犯人が伏線もないまま唐突に判明したあたりで後から異音が。

ぶうっ。
せめてスカせよ!
さらにこれに呼応するかのように3列ほど前から中央通路にさっきより大きなねずみが躍り出ました。
そんな連係プレーはいりませんから!
ここではた、と気付きました。
ペット臭の正体はお前か!
もはや現代日本の常識では映画を観るどころの騒ぎではありませんが、画面から気を逸らすとまだどんなおぞましいものを目にするか怖かったので前だけ向いて耐えました。
あと些細なことですが、従業員の方、ラストのあたりでガラガラ音をたててゴミ集めするのはやめた方がいいと思います。
気の抜けたエンディングの後、そそくさと退散する我等。
ちなみに後ろの列の酔っ払いはオウム真理教式空中浮遊(http://www.h2.dion.ne.jp/~justice/LOVELOG_IMG/oumu01.jpg
失敗したような体勢でぐうぐう寝入ってました。おやすみなさい。でもお前、何しに来たんだ。
出口に向かっておっさんをかき分けていると、彼らにもいろいろな種類がいることを改めて実感できます。
酒臭いの、ヤニ臭いの、禿げてるの、ジャンパー着てるの、上下スウェットの、ぶつぶつ言ってるの、死にそうなの…。

日頃は気付かない、というか気付きたくもない彼らの個体差。

それが今回の収穫でした。
彼らのほとんどは向かいの場外馬券売り場から流れてくるのでしょうが、干支が「午(馬)」から「おっさん」を経由して「鼠」に移行する年月の移ろいも体感できて有意義なひと時を過ごすことができました。

肝心の映画は、あとに何一つ残らない駄作でしたが。


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コメント 8

瑠璃子

>彼女は映画館をメインに旧・浅草六区へ繰り出しました。

そうでもないよ。カルト映画好きの琴線に触れたもん。
by 瑠璃子 (2008-02-13 12:03) 

クロヒコ

企画が無茶だと思ってたら、やっぱり健さんが健さんにしか見えなかったよね。
この人にコスプレは無理でした。
まあ、無茶はカルト映画の条件だからねえ。
by クロヒコ (2008-02-13 12:10) 

つぼっち

岡山出身者の私としては、金田一シリーズの中でも、
この「悪魔の手毬歌」と「獄門島」が圧倒的に好きです。

そして、市場価格を無視したお菓子の価格設定、
映画館とは、やはり現実社会から切り離された空間なのでしょうか。
by つぼっち (2008-02-13 19:10) 

クロヒコ

おお。
金田一シリーズは横溝正史が疎開してた関係上、岡山の話が多いですもんね。磯川警部!
自分は『獄門島』は本邦のミステリのなかでも最高傑作のひとつだと思っています。
なお、みょうに高いスナック菓子ですが、酔っ払いの人気商品なのかもしれません。前後不覚に陥ってる人が結構多かったので(笑)
池袋の新文芸座もけっこうおっさんが多いのですが、全然行儀がいいです。やはり浅草の土地柄を反映していると思われます。
女性は一人で行かないほうがいいかもしれません。
by クロヒコ (2008-02-13 23:00) 

quatre-l

うむ~、まだあったんですね、こういう劇場が。
ちょっと前まで東宝系以外の地方の映画館というのは、似たり寄ったりでした。

自分は、福岡松竹で猫大のネズミを数度目撃しております。目撃どころか彼は、我々をあざ笑うかのように足元をすり抜けるのです。ホンキで怖かったです。

我が、高崎松竹電気館(松竹ばかりですが)に「226」を観に行った時、もぎりのオッサンは腹巻+ステテコで歯ブラシをくわえたまま。
これは、強烈でしたねぇ。別スクリーンでは「愛と平成の色男」(玉置浩二)を上映中で女性客もいたのに、、、。
by quatre-l (2008-02-22 00:16) 

クロヒコ

猫大のネズミ!
ひょええええ。
確かに3列前のおっちゃんが脚で「しっしっ」て追い払ってましたよ。
もぎりのおっさんもいい味出してますね。自宅かよ!仮にそうでもくつろぎ過ぎだよ!
浅草名画座ではもぎりのおばあちゃんにスタンプカードをもらいました。
「10回来ると次の一回がタダですよ」
と言われましたが、あと9回…。いや、タダ含めて10回…。
よほどのラインナップじゃなければ行かないと思います。
素敵な(?)体験談ありがとうございました!
by クロヒコ (2008-02-22 21:29) 

無法松

いやぁ、きっと、映画よりも面白い映画館レポートだと思います。「彼女」サンにとっても、 浅草のオヤジは強烈だったのではないでしょうか?
by 無法松 (2009-11-30 01:56) 

クロヒコ

はじめまして無法松さん。
過分なお言葉を賜り、恐縮です。
いやほんとに凄いんですよ。ここ。

彼女(当時w)は自分よりもなおオヤジにご執心でして、自分の方がよっぽど引いていました。
いやあ、久しぶりにこの日記読み返しましたが、イメージが一気に甦りました。ショックだったのですね。
なお、今のところ再訪はしておりません。
当たり前ですがw
by クロヒコ (2009-12-01 02:42) 

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